<フセイン元大統領の死刑執行>

フセイン元大統領の死刑執行


 超大国のエゴによる犠牲者と言うべきだろうか。サダム・フセイン元イラク大統領が死刑執行された。冷戦中は米国の石油戦略に利用され、イランのイスラム革命勢力への圧力として使われ、冷戦崩壊後は湾岸戦争で米国と敵対関係に陥り、最後は米国が作り上げた傀儡政権によって処刑された。彼のように不幸な生い立ちが原因で独裁的な指導者になった人物はナポレオン、ヒトラーなど世界にいくらでもいるが、やはり、裏切られて死ぬ運命だけは避けられなかったようである。

 イラク戦争中は情報操作によって、何度も死んだことにされたフセイン大統領であったが、今度は本当に死んだのか、疑問を持つ人が多いようである。死刑の様子をビデオ撮影して置いて、放送するかどうかで迷っているそうだが、死体を見ないと大統領の死を信じる人は少ないだろう。

 フセイン元大統領がイラクの新政権によって処刑されたからと言って、イラクの治安が安定するわけでも、平和がやって来るわけでもないことは、多くの人が知っていることだと思う。

 これは、日本でも昔、織田信長が明智光秀から本能寺で暗殺された時に、戦国時代の終わりが遠のくと危惧されたのと同じである。秀吉が信長の意志を継いで天下統一を果たさなかったら、戦国時代はさらに長引いていただろう。

 現在のイラク情勢を見る限り、米国は過去の歴史から学んでいない。アフガニスタンやイラクに米国の傀儡政権を作っても、決して長続きしないことは、中国やインドが英国の植民地だった時代が決して長くは続かなかった例を見てもわかることである。

 イラクの場合は地理的に周辺国の勢力争いに巻き込まれる危険が高く、シリア、イランなどの影響を受けて戦争が泥沼化するのは最初からわかっていたにも関わらず、フセイン大統領の影響力を過小評価して政権崩壊に追い込み、政権を潰した後になって事態の深刻さに気がついたというお粗末な結果に終わっている。

 イラクは今後、米軍の撤退によって傀儡政権が崩壊し、その後は内戦状態が続くだろうと思われる。そして、最も強い者が権力を握ってイラクの統治を果たす日が来るまで、それは続くだろうと考えられる。これはテロリストから身を起こして権力を握ったフセイン大統領自身の生涯を見てもわかることである。現在、イラクでテロを起こしている者の中から第二のフセイン大統領が生まれるのは、ほぼ間違いないと言っても良い。

 米国が敵視している人物に対して、正しい評価がされていないのはマスコミが正確な表現を避けているからであるが、サダム・フセイン大統領やオサマ・ビン・ラディンという人達は、イスラム圏から見れば、イスラムの統一を果たす為に戦った歴史上の人物として再評価されるべき人物ばかりであり、米国や英国はどう言い逃れをしても外国の侵略国家としてしか評価されないわけである。

 これは日本やドイツが他国を侵略していた歴史を考えてもわかることであるし、大英帝国やフランスなどの覇権主義国家が植民地拡大を続けた後に、それを次々と失っていった歴史を見ても明らかなことである。

 四大文明の中で独立を果たしていないのは、シュメール文明だけであり、それはイラクそのものなのである。米英という超大国の干渉が続く限り、この地域の安定が続くはずがなく、戦争とテロが続くのは避けられないことである。石油という富の利益を巡る争いが続く限り、石油が枯渇する30年後までは、この地域の戦争が無くなることは無いであろう。

 石油を安く買おうとして、この地域の不安定化を進めて来た大国の政策を見る限り、フセイン大統領の死がこの地域の平和にプラスに働くとは思えない。それは、これまでも、そして、これからも続くイラク情勢を見ればわかることだと思う。

 現在の石油価格高騰によって、多くの産油国の経済が潤い、米国が環境政策を変えざるを得なくなっているのも、イラクの人達が米国と戦っているからなのである。日本は石油の利害に関しては米国と同じ立場だが、専門家による指摘で、設備の老朽化など、石油の生産量が伸ばせない為に石油価格が安くなる公算は無いと予測されている。今後は前向きの環境政策が必要になるだろう。



                                   <NOBUAKI>