<なぜモラルは低下するのか>

なぜモラルは低下するのか


 政治家、官公庁、企業、個人に至るまで国中でモラルハザード(倫理欠如)が進み、政府や企業が信用を失っている。なぜ、このような事態が起こるのだろうか。

 政治家や官僚のモラルが低いことは、すでに何十年も以前から多くの識者が指摘していたことなので、今さら言うまでもないことである。教科書を作らせれば、自党に都合が悪い政治をおこなった政治家の名前をことごとく削除して、歴史の改竄をおこない、歴史を教える教師は教科書を読まずに教えていたという時代さえあったほどである。そして、それを批判されると、今度は記述を徹底的に短く書かせて、どういう歴史なのか詳しくわからないようにしたり、とにかく、浅ましいほどのモラルしかない政治家が多いのが、日本の現状である。

 これは別に政治家に限らず、官僚でも同じであり、日本の官僚は世界でも最も質が高いと公言していたNHKが、不正事件を頻発して醜態を晒している現況を見れば、どれほど、我々がマスコミによって嘘を信じ込まされて来たかがわかるというものである。こういうモラルの無さは企業や個人にまで浸透し始めている。

 過去に起こった事件を見ても、下請け作業員が核物質をバケツで汲み上げて運び、手作業で格納容器に入れていて、核反応を引き起こして被爆し、死亡した事件があったが、同じように下請け会社が修理やメンテナンスも満足に出来ずに、エレベーターで人身事故が起こったり、プールの排水溝に子供が吸い込まれて死亡したり、あまりにもずさん過ぎて情けなくなって来るような事件が、何度も繰返されているのが実情ではないだろうか。

 誰がこのような事件を起こす原因を作ったのだろうか。私の知る限りでは、派遣事業法が出来た頃から、すべてのトラブルと事故が始まっているように思う。技量や経験に乏しいフリーターやアルバイトを安い賃金で使うことを許可し、それが時間と共に正規社員よりも劣る質の低下をもたらして、事故や事件の多発を招く結果になったのではないだろうか。

 今後、団塊世代が大量退職した後は、現在起こっている社会現象が急激に悪化するのではないかと危惧されている。技術を持っている正規労働者が不足し、技術を持たないフリーターやアルバイトでまかなおうとして、事故や事件の多発が起こるというものである。

 現在でも、毎日のように事故や事件の報道が続いており、これがさらに悪化するとなると、相当ひどい事態になることが予想される。社会機能の麻痺にまで至る危険さえある。こういう現象は戦時中に労働者不足から、十分な教習をおこなわずに経験不足のまま女子学生を工場や交通機関に送り込んで不良品の大量生産や事故の頻発を招いた過去に良く似ている。

 モラルハザード(倫理欠如)が起こっている原因はインターネットが普及した情報社会の価値観にあると主張するマスコミもいるが、インターネットはむしろ、情報の欠如で実態を知らなかった人々にも情報を知る機会を与えたわけで、決してインターネットが価値観喪失の原因だとは思わない。画一的な報道姿勢を批判され、また、事実を隠したり、報道を遅らせることが多いマスコミの責任の方が大きいのではないかと思う。

 こういうモラルハザード(倫理欠如)が起こる場合には、責任の所在を明確にし、フリーターやアルバイトが十分な教育と正当な扱いを受けられるように法律の整備をおこなうべきなのだが、これをおこなうべき政治家がモラルハザード(倫理欠如)しているのだから、話にならない。

 こういう状況に至った国がどうなるかは、過去の歴史に従うしかないが、立直ったという話はほとんど聞いたことがない。英国で政治家のモラルハザードが問題になった時に、伝説的な政治家が国を建て直したという話はあるが、日本の場合は、こういう人がいても、馬鹿にし、愚弄し、意見を聞かない政治的土壌があり、それが予測されている破局を解決策無しに放置する結果を招いている。

 悲観的過ぎるかもしれないが、こういう状況に陥った後に起こるのは、暴動か、軍事クーデターによる国政の混乱というのが、歴史の常である。日本はまた危ない橋を渡り始めているのかもしれない。



                                   <NOBUAKI>