<ロボット兵器に対する偏見と妄想>

ロボット兵器に対する偏見と妄想


 NHK特集がロボット兵器を取り上げるほど、ロボットが戦争と深く関わるようになって来たが、果たして、ロボット兵器とは何なのだろうか、どこまで人間の肩代わりが出来るのだろうか。また、ロボット兵器がなぜ非人道的という偏見の視線に晒されるのだろうか。ロボット兵器の戦術的・戦略的な展望を考えてみようと思う。

 殺人ロボットと言うと、古くはフランケンシュタインなどのホラー映画の中で登場する怪物であったり、SF映画で登場する人間に対して反乱を起こしたコンピュータやロボットという扱い方がされて来たが、現実のロボット兵器とは、そういうファンタジックな機械ではない。遠隔制御というかなり以前から存在した技術が急速に進歩した結果、地球上のどこへでもロボット兵器を運んで遠くの安全な地域からコントロール出来るようになったというものであり、むしろ、ミサイルの誘導技術の延長線上にある技術である。

 現在のロボット兵器は、まだ初歩的な段階のもので遠隔制御によって人間が移動方向や攻撃命令などを指示して動かしているリモコンロボットに過ぎず、デジタルカメラを搭載することで遠くから敵を見ながらコントロール出来るようになったというものである。この技術の起源を辿ると、ゴラン高原で旧ソ連製の対戦車用ワイヤー誘導ミサイルが望遠鏡と電線を使ってミサイルを歩兵が誘導することで高い命中精度を達成し、わずか3分でイスラエルの戦車部隊が壊滅した歴史に始まっている。

 このミサイルは現在も使われているが、基本的な原理は最新の有線誘導ミサイルも変わっていない。このミサイル誘導技術をロボットの制御技術に応用する研究は米国が20年以上前から研究を始めており、最近になって実用として使えるロボット兵器がいくつか作られるようになって来ている。

 最も多く使われているのは無人偵察機だが、他にも自走式の偵察車、自動小銃とモニタカメラが5つ付いた歩兵の代用をするスナイパー型のロボット戦車、手投げ弾を投射して攻撃出来るロボット戦車などがあるが、どれも人間と同じくらいか、人間よりも小型の兵器であり、遠隔制御技術によって、遠くにいる操縦者がリモコン制御するものであり、人工知能で敵味方を識別して攻撃したり、作戦命令に基づいて行動したりする高度な兵器ではなく、構造はずっと単純なものである。

 なぜ、こういう兵器が必要とされるのかについては理由がある。つまり、人間の兵士が戦場で死亡したり、負傷する原因の多くは偵察活動や敵に見つかって攻撃を受けた場合であり、決して映画に出て来るような激しい銃撃戦によって死ぬわけではない。むしろ、何もしないうちに一方的に殺害されるケースが非常に多いわけである。

 そして、偵察に行って死亡したり、負傷した兵士は回収にいかなければならず、それがまた次の犠牲者を生む危険を招くし、一人死ねば、遺族への補償金など軍の出費も多くなる。また、現在のように戦場が放射能や化学物質で汚染されている場合が多い時は、何もしなくても帰還した後で治療が難しい病気を発症して苦しむ兵士が続発することになる。

 こういう戦争の現実を考えた場合、人間ではなく、ロボットを使って偵察や攻撃をおこなえば、たとえ反撃されてロボットが破壊されても人命を失う危険を減らせるということが昔から考えられていたが、ロボット兵器が実現するまでは、夢の話に過ぎなかった。

 日本では、こうした戦争の現実を考えずに、ただ単に戦争へのロボット技術の利用という視点だけでしか議論されることがなく、SF映画やアニメなどもフランケンシュタイン的な恐怖感や哀れな機械という捉え方しかおこなわれず、人命を救うとか、犠牲者を減らすという議論はされて来なかった。その為、ロボット兵器と聞けば、すぐに反対論が起こるような風潮が現在も続いているのが実態だろう。

 しかし、コンピュータの例を見てもわかるように、パソコンが普及するまでは、コンピュータは悪の権化のような扱われ方がSFやアニメでおこなわれていたのに対し、現実に普及したパソコンは情報革命を起こして、我々のコンピュータに対する偏見を一掃しているのである。

 同じことは、ロボット兵器に関しても考えなければならないことだと思う。ロボット兵器は戦争のあり方を変えるロボット革命を起こすのは間違いない。人間同士が戦場で戦う戦争は終わるかもしれないのである。今後は、人間は黒子役になって、戦場で戦うのは遠隔制御によってコントロールされるロボット兵器や人工知能兵器ばかりになり、戦争の概念が大きく変化すると考えられている。

 もちろん、人間の犠牲者が一人も出ないわけではないだろうが、今までの戦争のような死に方をする兵士は確実に減ることは間違いない。同時にそれは、戦争での死が美化されるものではなく、卑下される時代の始まりを意味するかもしれない。

 遠隔制御されたロボット兵器によってテレビゲームのモンスターのような殺され方がされる以上、戦争での死は決して名誉なものではなくなるだろう。また、戦場での殺人もゲーム感覚のものになって、後悔や反省が起こりにくいものに変わるだろう。

 現在の社会的風潮が戦場まで変えるようになるわけだが、これは戦場だけの変化ではない。最近、問題になっているテロもまた、ロボット兵器の普及が始まれば、同じことが起こるようになる。遠隔制御でロボット兵器を使ったテロが続発する時代に入るだろう。

 現在のロボット兵器はまだ人間の判断能力に頼り過ぎているが、人工知能が高度化して、人間の判断力を補うようになれば、コントロールしやすいロボット兵器が作られるようになるだろうし、小型化とローコスト化が進めば、大量に使われるようになるだろう。究極的には、細菌兵器と同じ使い方が出来るナノロボット兵器も作られると予測する科学者もいるくらいである。

 現代戦はロボット兵器の登場によって、戦争の戦い方が変わり始めている。この動きを止めることは出来ないだろうし、何もしなければ、昔の戦争のような特攻攻撃で大勢の若者を死なせたのと同じ悲劇を繰返す危険もある。どのような意味でもロボット兵器は必要とされるだろうし、それに反対する場合は、ロボットの用途や目的を十分に知り尽くした上での議論が必要になるだろう。

 ただ、ロボット兵器は万能だと信じ込んではいけないと思う。停電したり、電磁パルスで回路がショートしたり、遠隔制御用の通信経路が遮断されれば、ロボット兵器は役に立たない物になる。コンピュータが社会を変えたように、ロボットも戦争や社会を変える大きな力となることだけは心に留めて置かなければならないだろう。



                                   <NOBUAKI>