<なぜ、対策を取るという嘘をつくのか>

なぜ、対策を取るという嘘をつくのか


 現在、失業問題、特に若年失業問題が深刻化しているが、それに対して政府が取った態度は無視と事実の隠蔽を続けるというものであった。そして、それは現在も続いており、決して抜本的な対策を取るつもりはないように見える。なぜだろうか。

 ニート問題などと言われているが、これは別に今に始まったことではない。バブルが始まる以前、それも情報革命が始まり、派遣事業が承認された頃から起こっていた社会問題だった。なぜ、ニート問題が起こるのかは私が言うまでもないことであろう。つまり、正社員の雇用が激減し、フリーターやアルバイトのような派遣社員が増えた結果、低賃金・不安定な雇用形態・社会保障の不備などが起こり、未来に希望を持てない若者が急増した結果である。

 そして、こういう社会問題を政府もマスコミも深刻に取り上げようとせずに沈黙と無視を続け、ついに消費が落ち込むという深刻な経済問題にまで発展して騒ぎ始めたということに過ぎない。もちろん、騒いでいるだけで解決策を講じるということではない。なぜならば解決策などないからなのだ。同じような社会問題は英国でも昔からあり、英国政府はこうしたニート達に国から職業を与えるという抜本的な措置を取ったが、結果的には無駄に終わったという失敗をしているからである。

 では、なぜニート問題が雇用の場を与えることで解決できないのかと言えば、理由はいくらでもある。まず、教育が政治介入によって崩壊している現実がある。教科書には現実の社会問題について何も書かれていない。特にどういう解決策を取れば良いかが何も教えられていない。結果、何をどうすれば良いかがわからずにニートにならざるを得ないのが現実なのである。

 また、政府や企業がニート問題を前向きにとらえていない。ニートが増えた背景には企業が正社員の雇用を減らし続けたのがあるのだが、これについて政府は公務員を増やしてバランスを取るとか、職業安定法を改革して失業対策の強化や職業教育の強化などをしようともしなかった。結果、大量のニートを生み出すことになり、それは現在も続いているのである。

 また、マスコミもこうした現実を深刻な社会問題として国民に訴え、抜本的な対策を取るように呼びかけるような態度を取ろうとしなかった。ニートからフリーターに採用され、さらに正社員へ進む道を作るべきだという現実にはありえない解決策を提示した放送局もあるほどである。もちろん、こんなことが可能ならばリストラ問題など存在しないことは誰もがわかるはずである。現実には、一度ニートになったら、正社員はおろか、フリーターとして生きていくのも難しいことを体験している人は多い。政府だけでなく、マスコミもまた現実離れした対応しかして来なかったのである。

 では、なぜニートは増え続けるのだろうか。最も大きな理由は企業が人を雇わなくなったことにある。即戦力とか、経験者とか、企業が何も教育しないでもすぐに労働力として投入出来て、しかも低賃金で雇用出来るという、企業に取って都合が良過ぎる評価基準に基づく採用を続けた結果、労働者の希望とのギャップが大きくなり過ぎたのが原因なのである。

 ニートになった者がなぜ働く意欲を失っていくのかは、比較的簡単に理解出来る。こう考えれば良いのである。人間は雇用によって賃金を得ることだけが目的ではない。社会的地位を得ることや組織の一員として認められることも目的なのである。また、賃金を得ることによって、家族を養い、子供を育て、新たな社会の一員となる人間を生み出すことも目的となる。つまり、雇用されて職業を得ることは、その人にとっては社会活動の一環なのである。

 ところが、現実の雇用の場はどうであろうか。例えば、フリーターは結婚して子供を育てていけるほどの賃金を保障されていない。年金や保険、労災保障なども不十分である。当然、このような雇用環境では働くことで得られる社会的貢献の対価は低く、当然、社会的使命感や責任感も下がっていく。結果、労働意欲を失ってやめていく結果となり、ニートの大量生産という構図が出来上がるわけである。しかも、一度、こういう体験をした人は、言わば、PTSDのような精神状態になってしまい、立ち直るのに大変な時間を必要とする結果となる。そして、立ち直るのに時間がかかればかかるほど、雇用の機会は遠のき、得られる職業の質も下がっていくのである。こうした現実を考えずに、ただ急場の職業を与えればニート問題は解決するという認識しか持っていなければ、この問題を解決することが不可能であることは容易にわかるはずである。

 また、ニートが大量に存在するという状況は政治的には非常に危険である。ナチスが政権を握った頃のドイツも同じような状況にあったからだ。大量の失業者がいることだけが社会問題なのではない。十分な賃金と社会的な貢献度を体感出来る職業を与えなければ、ファシズムによって政府が倒されるという認識を当時の政党の多くが持っていなかったのだ。

 この為、労働者に職場と賃金と社会的な貢献度を与えるという約束をしたナチスが政権を握る結果となり、他の政党は選挙に勝つことが出来なかったのである。今の日本で、もしも同じような約束をする政党が出現し、しかも、実際に行動によって、それを実践し、ニート達の信頼を得るようになったら、ナチスと同じ結果をもたらすことは間違いないであろう。

 そういう意味では、現在の日本は第三次世界大戦の最前線にある国なのである。ニートという言葉を作ったこと自体が失業者をナチスに走らせる原因を作っている。なぜならば、失業して働く意欲を失った人は、そのまま高齢者になる場合が決して少なくないにも関わらず、ニートという言葉を作った人間は勝手に34歳以下という基準を何の根拠もなく決めているからである。

 日本はこれから国債の大暴落という大きなハードルを越えなければならない。もちろん、その時には円や株も暴落する危険がある。再び、ファシズムが台頭する危険はいくらでもあるわけである。

 こうした時に、ファシズム政権に都合が良い法律ばかりを政府は作っている。例えば憲法改正、例えばテロ防止法、例えば、国民保護法。ファシズムから見れば、いくらでも悪用出来る法案ばかりが作られているわけである。そして、大量の失業者、ニート達が生み出され、いつでもファシズムが作られる状況にまで来ている。

 歴史が繰り返すのは、決して人間が愚かだからではない。物理学の法則のように容易なことでは解決が難しい政治問題、経済問題が存在するからである。現状追認、大国の言いなりという現在の政権に、この問題が解決出来るとは考えにくい。


                        2005年12月28日 <NOBUAKI>