<戦争の焚き付けとは何か>

戦争の焚き付けとは何か


 戦争を焚き付ける方法だったら、いくらでもある。経済を破綻させて、国家間の緊張関係を煽れば、戦争を起こせるのは誰でも知っている。しかし、人間の意識下の洗脳、マスメディアを使った扇動に関しては、ほとんど取り上げられず、話題になる事もない。戦争を作り出しているのは何だろうか。

 米ソ冷戦時代、キューバ危機が深刻化し、ベトナム戦争が泥沼化して、ケネディ大統領暗殺事件が起こった頃が、テレビ放送による戦争の焚き付け宣伝が酷かった時代だった。

 あの当時は放送法が今とは違って規制が緩やかだった為に、過激な宣伝番組やCMが野放しで、放送法が改正されるまで、それが続いていた時代である。

 当時、私はまだ小さな子供だったが、テレビ放送で変なCMや番組が放送されていたのは覚えている。たとえば、米国のCMを吹き替えて放送されていたものがある。以下のような内容である。

 米国の一軒家が出て来て、夫婦と子供が住んでいる。そこへ3人の男がやって来る。子供はおもちゃを男達に渡し、主人は車や家を渡してしまう。財産全てを男達に渡してしまうコメディーである。そこへ丸裸のセクシーな奥さんが家から出て来て、男達に、「まわしてください。」を連呼するというものである。

 意味がわからない人がいると思うので説明して置くが、戦争になれば、家族も財産も全て敵に奪われるから武器を取って戦えという意味のプロパガンダCMである。

 もちろん、お笑いCMなのだが、叔母から「米軍がやっている戦争の焚き付けだから信じないようにしなさい。」と言われたのを覚えている。当時の米国では、厭戦気分が蔓延していて、こういうCMが作られていたのだろう。日本を戦争に巻き込む為だったのかもしれない。

 同じような宣伝は様々な番組で放送されていて、真夜中に煽情的な米国のCMなどが放送されていた。内容は精神分析学で言えば幼稚なもので、丸裸の女性が大皿の上で陰部や尻の割れ目にフォークやナイフなどの男性シンボルを突き立てるというサブリミナルを使って、思春期の男性に強姦や輪姦を宣伝するものであったが、今のインターネットと大差が無い規制しか無かった時代の話である。

 その後、放送法(倫理基準)が改正されて、露骨な宣伝は影を潜めたが、同時に放送の自由も無くなったように思う。現在の放送法は、政治的な扇動を目的にした放送内容に対する規制強化の繰り返しで出来たもので、最後は何も放送出来なくなる結果に繋がっている。

 それに代わって始まったのは、陰湿なサブリミナルやマインドコントロールを使ったもので、意識下の宣伝が繰り返されている状況である。

 こういうテレビ放送による意識下の宣伝が続いている状況を知らないでいると、連続幼女殺害事件のような猟奇的な犯罪事件が起こる原因がわからないだろう。あの事件を見て思ったのは、アニメや映画の形で放送されている宣伝内容を全て信じ込んでいれば、起こり得る事件だったことである。

 インターネットを見て過激な写真や動画が多いのに閉口する人がいると思うが、テレビ放送の倫理基準も昔は大差が無いものであった。テレビは放送法の規制強化で過激な内容を放送出来なくなったが、同時にテレビ視聴率も低下した。インターネットは規制強化で自由を失うことは無いだろうと思うが、規制とは何かを考える上では、放送法の遍歴が参考になるのではないかと思う。

 戦争の焚き付けには精神分析学や心理学が使われ、映画やテレビなどのマスメディアが利用されるのは、今も昔も変わらない。今は戦争の冷酷非情な現実を知らせずに、ファンタジーを信じさせる宣伝が続いている時代である。



                                   <NOBUAKI>