<NHK「追跡・秋葉原通り魔事件」を見て>

NHK「追跡・秋葉原通り魔事件」を見て


 NHKスペシャル「追跡・秋葉原通り魔事件」を見て思ったのは、事件が起こった背景や因果関係について、うまくまとめてあるにも関わらず、事件の本質に関わる政治的課題については避けている点だろう。NHKの番組を見ると、全てを知ったように思えて、実際にはわからないことが多く残るのは、こういう番組製作姿勢にあるからだが、秋葉原事件が起こる原因を作った政府の政策上の問題については何も報道されておらず、個人的な責任論から抜け出せていない。

 秋葉原通り魔事件に対するマスコミ報道がNHK、民放を問わず、犯人に対する怒り、もしくは、犯人の孤立した人生に対する同情論しか報道していない点には疑問がある。

 事件を起こした加藤容疑者は、トラックを運転して事件を起こしており、大型二種免許を持っていると考えられる。周到に練られた殺人計画の下に、それを実行に移し、成功させている。大変な実行能力の持ち主であり、単に失業した派遣社員が起こした凶行事件と呼んで片付けられるような問題ではない。

 自分が同じ事件を起こす場合を考えてみればわかる。加藤容疑者と同じ境遇の人は数多くいるだろう。しかし、同じ事件を起こせる人はほとんどいないのである。理由は、まず、自分自身の生命を危険に晒す恐怖感、家族や親戚に迷惑をかけるのではないかという不安、死刑を免れない罪悪感、こうしたものが我々の脳に安全装置として何重にもブロックがかけられていて、こういう事件を実際に起こそうとすると、つまらない失敗をする結果を生むのである。

 2分間で7人の人間を殺そうと考えてみればわかるが、大部分の人は1人殺すだけでも決心が揺らぐはずである。実際、17人の人間をダガーナイフで刺そうとしても、多くの場合は、殺すどころか、ケガをさせるのがやっとであり、あらかじめ練習を重ねて、殺害する時点でのミスを犯さないように訓練を積んで置かなければ、2分間で17人を刺し、7人を死亡させるのは難しいだろう。

 ダガーナイフの扱い方に慣れていなければならないのは、もちろんであるし、池田小学校事件を起こした宅間守と同様に軍事訓練を受けた経験があるのではないかと思われる。

 もし、秋葉原通り魔事件を米軍人や現役自衛官がおこなっていたら、一般市民の反応は大きく違っていただろう。怒りばかりで同情はもたらされなかったに違いない。米軍や自衛隊への激しい反発へと繋がったはずである。

 では、なぜ、宅間守や加藤容疑者のような元自衛官、自衛隊と交流がある民間人が連続通り魔事件を起こすのだろうか。背後関係を疑っても良いはずだが、マスコミは、その点に触れたがらないのである。

 5・15事件や2・26事件のような政府転覆を計画したクーデター事件が起こった時も、マスコミが背後関係の追求を十分におこなわなかった結果、クーデターが連続して軍事政権をもたらし、戦争へと突き進む結果を生んでいる。

 今、起こっている連続通り魔事件もまた、背後関係についての議論がおこなわれていない。マスコミが言及を避けているのは、政治勢力が関係しているからではないだろうか。

 現在、繰り返されている連続通り魔事件は、地下鉄サリン事件で失敗したオウム真理教に代わって、大量殺人を繰り返し、民衆の動揺を誘っている政治勢力によるテロ事件ではないかと疑われるのである。

 討幕運動が盛んだった幕末にも辻斬りと呼ばれる連続通り魔事件が相次いでいたと言う。辻斬りが民衆の幕府に対する不満を発散させる目的でおこなわれた政治ショーだったと指摘する人もいる。現在、起こっている通り魔事件も当時と同じ原因によるものだと考えれば、これから何が起こるかも予測出来るはずである。

 連続通り魔事件の犯人に同情するのは危険である。政治的背景が何も報道されておらず、単に鬱憤晴らしでおこなったのであれば、秋葉原に人が集まるまで、何度もトラックを迂回させて時期を見計らっているなど、あまりにも周到に計画が練られ過ぎている。

 自暴自棄に陥って通り魔事件を起こす犯人の多くは、性的対象である若い女性や子供を襲う場合が多く、これは本能的なものであることがわかっている。

 それに対して、加藤容疑者の場合は、中高年の男性を多く殺害しており、若い女性は一人だけで、子供は殺していない。これは高い理想を持つ男性が理想の実現を目的に起こした殺人事件であるのを物語っている。

 秋葉原通り魔事件にどういう政治的背景があるのかはわからないが、少なくとも、現在の社会問題が連続通り魔事件のようなテロで解決することはない。加藤容疑者の正体がはっきりするまでは同情論は危険だろう。



                                   <NOBUAKI>