<安くなかったLNGロケット「GX」>

安くなかったLNGロケット「GX」


 ロケットを低コストで開発するにはどうすれば良いだろうか。LNG(液化天然ガス)を燃料にしたGXロケットが当初の見積もりよりも一桁も多い開発費用に膨れ上がり、批判を浴びている。本来、低コストにするには、旧来の技術を改良して設計する方法と、コストが安い新技術を開発する方法とがあるのだが、技術的成果を焦るあまり、新技術開発に走る企業が多い。GXロケットの失敗もそれが原因だろう。

 すでに完成している旧来の技術を寄せ集め、試験期間にかかる費用を節約し、開発費用を抑える設計をおこなったロケットやジェット機はいくつか例がある。最新技術を投入しないとコストが下がらないというわけではない。何十年も昔から使っている古い技術で出来たロケットを現在も使うことで打ち上げ費用を抑えている国もある。

 それに比べると、最新技術の投入でコストを引き下げようという計画が大失敗に終わったのがGXロケットだろう。→GXロケット

 そもそもLNGを燃料に使うロケットというのは、米国が有人火星探査で帰還用に予定しているメタンを燃料にしたロケット技術を先取りした技術であり、液体水素ロケットと同じく、米国の後追い路線であるのは否定出来ない面がある。

 しかも、コストが割高になっただけでなく、打ち上げ能力も予定の半分に落ち、成果がまるで無かったロケット開発である。M5ロケットをそのまま使って打ち上げた方が遥かに安上がりだろう。

 米国の後追いで失敗した例としては、信頼性が低くコスト高で批判があるH2ロケットもそうだし、過去には成功したのに実用化されなかったSTOL機の例もある。米国と同じ技術開発を続けていれば良いのだという官僚主義の論理が垣間見える開発方針である。

 LNGなどのメタン系燃料を使用するロケット開発が進められた大きな理由は、コストを下げる為よりも、極低温で保存しなければならないロケット燃料の保存温度が高いことがある。ロケット燃料が高い温度で長時間保存出来るものであれば、有人火星探査のように長期に及ぶ宇宙飛行では、帰還用に使用するロケット燃料として無くてはならない技術となる。

 結局、LNGを燃料としたGXロケットは、コストを引き下げるのが目的と言うよりも、宇宙開発で米国の後追いをする技術にしか予算が付かない体質を露呈しただけだろう。

 LNGロケットの応用として考えられるのは、最近、探査機の着陸で有名になった土星の衛星チタンだろう。チタンには大量のメタンが液体や固体の形で存在するので、それを回収して不純物を分離出来ればロケット燃料として使えるという話はSF小説などでも良く出て来るが、実際には、ロケットという精密機械は僅かな塵粒がパイプに詰まっただけでも爆発事故を起こす危険があり、十分な探査が終わっていない未知の衛星の物質をそのまま使うわけにはいかないだろうと思う。

 宇宙開発は夢と現実が交錯する世界である。LNGを燃料としたGXロケットが全く無駄だとは言わないが、目的を誤った可能性は否めない。100年前に電気自動車が時期尚早で失敗した時代があったように、GXロケットも同じ失敗を繰り返す結果になっているように思うのである。



                                   <NOBUAKI>