<火星で発見される奇怪な岩>

火星で発見される奇怪な岩


 火星探査が進むに連れて発見の報告が多いのが奇怪な形をした岩である。過去にも人間の顔に似た岩が発見されたことがあったが、今回、火星探査機が発見したのは、人間の彫像を思わせる形をした岩石が巨大な岩の頂上にあるというものであり、誰かが置いたような錯覚を覚えるほどである。火星には、なぜこのような人間の錯覚を引き起こす岩石が多くあるのだろうか。

 遠い未来、人類が死に絶えて、文明の廃墟が残っている地球を想像してみよう。超高層ビルや橋などのコンクリート建造物、アスファルト舗装された道路などは残るだろうが、いずれは地震や台風などの自然災害で壊れ、水害で押し流されて失われるだろう。

 1万年後になっても残っている文明の遺跡は、巨大な岩で作られた彫刻物だけである。ピラミッドのような岩石を積み上げて作られた人工物は数千年の歳月が過ぎても残り続ける。1万年後になっても、その残骸は残っているだろう。

 それに対して、コンクリートの寿命は短い。百年で酸性化が進み、鉄筋が錆びて、構造的に脆くなって崩壊する。数千年も形を保つコンクリート建造物は存在しないのである。

 現代文明の遺跡は数千年後まで残っている物はほとんどないと言って良い。せいぜい、岩石を積み上げた遺跡や岩を削って作られた彫刻物ぐらいしか残らないのである。

 我々が住んでいる都市も数千年後には自然に戻っているだろう。まして、数十億年という天文学的な時間が過ぎても残っている人工物を探すのは非常に難しいだろう。

 ただ、これは大気や海などを失った惑星上では異なって来る。大気や海があった頃は激しい浸食に晒されていても、大気も海も失われて、自然の浸食作用が無くなった後は、数十億年の歳月が過ぎても、ほとんど変化無しに遺跡が残り続ける可能性があるからである。

 火星という惑星は、初期には濃い大気や海を持ち、雨が降り、風が吹いていた惑星であったと考えられている。それが急速に海が凍りつき、大気が失われ、現在のような乾燥した薄い大気しかない惑星になってから、数十億年間に渡って、ほとんど変化が無い環境が続いて来たと考えられている。

 もちろん、火星の初期に文明があったはずが無いのだが、人工物を想起させる奇妙な岩が火星上に多くあるのは不思議な光景である。人間の錯覚がもたらした誤解に過ぎないものだが、あまりにも人工的な印象を受けるのは、なぜなのだろうか。

 地球上に文明が誕生したのは、原始的な遺跡を含めても、せいぜい数万年ほどに過ぎず、それ以前は石器を持って狩猟生活をしていた人類の化石が見つかる程度に過ぎない。

 建築物を築いて集落を作るようになったのは、数千年前ぐらいからでしかないし、コンクリートで建築物を築くようになったのは数百年ほど前からである。

 文明と言っても、巨大な橋や高層ビルが立ち並ぶ光景が長く続くわけではなく、文明が滅びれば自然の浸食作用で失われるものに過ぎないのである。

 なぜ、火星上に人類の文明が作り出した芸術作品のような物が見つかるのかと言えば、そういう物が自然界に無いという考えは、人類の偏見に過ぎないと言うべきだろう。

 むしろ、自然界にそういう形をした岩石を見つけた芸術家達が、形を模倣して作り上げた作品があるので、火星上で奇妙な岩石が発見されると人工物だと錯覚するのだろうと思う。

 火星上で巨大な岩石の上に腰掛けた人間に似た岩石が見つかったのは、その配置や形状を過去に芸術家が地球上の自然にある岩石から模倣した可能性を意味している。西欧文明では定番になっている人物の彫像を高い場所に配置する習慣は、自然の模倣から始まったものかもしれない。

 もちろん、もしかして本当に人工物であったら、人類史上最大の発見になるだろうが、火星の岩石の年代が数十億年前という途方も無く古いものであり、その当時の地球は海に単細胞生物がいるだけの惑星に過ぎないものであった。

 そんな大昔に人間に似た形の岩石が雨や風による侵食で出来ていたことの方が不思議かもしれない。

 火星での発見は人類文明が自然の模倣から始まっていることを暴くものになっているように思う。人工の池や噴水もまた、自然に出来た水溜りや間欠泉などの模倣であり、人間が自然から抜け出せないでいることを意味している。

 もし、地球外文明が火星上に残した遺跡であるのならば、惑星探査機のように自然界に無い人工的な形を選ぶだろう。そういう物だったら疑う余地が無いからである。

 SF映画にありがちな惑星上で文明の遺跡を発見するというお話が、現実では解釈が難しいことを火星での発見は意味している。火星上でシーザーの彫像や巨岩に刻まれた大統領の顔や石仏の彫像などに似た地形が見つかっても、人工物ではないだろう。

 これらの発見は人間の創造力が考えられているほど独創的なものではないことを意味しているように思う。人間の脳は自然から学んで創造する構造になっているわけであり、自然界に類似した物が見つかっても不思議な話ではないのである。

 火星で発見された人間に類似した形の岩は、液体の水がある惑星ならば、宇宙のどこにある星にも自然現象で作られることを意味している。つまり、知的生命がいる惑星ならば、どこの星にでも、火星で発見された物と類似した岩があるわけで、もちろん、地球にもある。あの岩の形は宇宙に置ける不変の法則によって生まれたものなのである。

 それは同時に、地球の岩の中にも、地球外知的生命に類似した形の岩があることを意味している。我々が日頃見慣れている珍しい形の岩が、実は数万光年の彼方にいる本物の地球外知的生命の姿にそっくりなのかもしれない。



                                   <NOBUAKI>