<NHK特集「ワーキングプアⅢ」の感想>

NHK特集「ワーキングプアⅢ」の感想


 時間が無くて少ししか観られなかったが、NHK特集「ワーキングプアⅢ」を観た感想としては、ワーキングプア対策を熱心にやっている優等生の自治体の姿だけ放送するのは、ワーキングプア対策を何もしないでサボタージュを続けている多くの自治体を隠蔽する為の政治に過ぎないのではないかと思うのである。ワーキングプア問題が国際的なものだという番組の主張もまた、米国のグローバル経済政策に追従した国々が抱え込んだ負の遺産という視点に欠けているのではないかと思う。

 ワーキングプア問題というよりも格差社会問題と言った方が実感があるが、貧困層が拡大するのは決して社会全体の利益に繋がらないという主張が必要だと思うわけである。また、貧困層を作り出して得られた利益が海外投資に向けられて、国内経済に還元されていない実態も描くべきだと思うのである。

 ワーキングプアや格差社会が拡大した結果、今まではうまく行っていた国内経済システムがうまく行かなくなり、消費の落ち込み、財政の悪化、景気が良いのに消費が増えない矛盾が続き、さらには、出生率の低下、人口減少など、国内経済の未来を危うくする社会現象が始まっている。

 ワーキングプア対策の例をいくつか出しても、気休めにしかならないことは多くの国民が知っているはずである。なぜならば、実行効果が薄い政策しか出して来ない点と効果が現れるのに時間がかかり過ぎる点があるからである。

 過去に米国で失敗に終わったニューディール政策の焼き直しをやっても効果は無いだろうし、情報社会の現在では、仕事をするのに必要とされる知識が多く、それを習得するまでに年齢を重ねてしまう問題もあり、企業が年齢の高い労働者の雇用を敬遠するなど、社会的な対応がまるで出来ていないからである。

 番組で取り上げられていたような非正規雇用から正規雇用に至る段階的な雇用過程を進めたとしても、その間に年齢を重ねてしまって、途中で雇用契約を破棄される場合があるのではないかと疑問に思うのである。

 政治家や官僚の作文通りの番組作りをおこなっても、政治的な意味合いを帯びるほど現実から遠いものになるであろう。

 ワーキングプア問題は時間をかけるほど世代を超えた問題となり、ワーキングプアの子供がワーキングプアになるという格差の固定化に繋がる危険が大きい。

 それは発展途上国にあるような未来への希望を失った人々による反政府武装勢力を生み出す温床になる政策であり、日本が過去に経験した爆弾テロが荒れ狂った時代へ逆行する危険を意味している。

 国家の分裂という深刻な社会問題を引き起こすのがワーキングプア問題であるという視点が無いのが番組制作の甘さとしてあるのではないだろうか。

 単なる所得格差の問題に過ぎないのだったら、企業経営者と労働組合の話し合いだけで解決出来るはずである。そうではなく、深刻な社会問題化しているのは、政府がさまざまな面で社会的な対応を怠って来た結果だろうと思う。

 労働組合の組織率が低下し、孤立した状態の労働者が多く、それが派遣労働でさらに追い詰められている現実を考えても、ワーキングプア問題だけの解決が全ての問題解決に繋がるとは思えないのである。

 ワーキングプア問題は、政府のグローバル経済政策の結果であり、それも予期されていた結末である。過去に同じ政策をおこなって世界恐慌と世界大戦を引き起こしたことがわかっていながら実施した政策でもある。

 第三セクターの破綻、サブプライム問題など、グローバル経済への不信は根深い。人生を奪われ、取り残されたワーキングプア達を助けようとするのは、過去の歴史を見る限り、極端な政治思想の勢力であるのを忘れないようにしたい。

 今のまま、何もしないでいれば、ファシズムであれ、革命であれ、国が分裂に向かうのは避けられないだろう。政府の腐敗と怠慢、不正事件の続発で国民の多くが政治に幻滅している時期でもあり、今ほど危険な時は無いのである。

 ワーキングプア問題を単なる所得格差の問題としてしか考えないのであれば、これから先に待っている国家の危機を防ぐ役には立たないだろう。



                                   <NOBUAKI>