<NHK「膨張するバーチャル経済」を見て>

NHK「膨張するバーチャル経済」を見て


 仮想空間に現実に似た社会を作って生活する遊びを提供し、仮想世界と現実世界との間で通貨交換を可能にして、言わば、仮想社会でビジネスをし、仮想経済を経験しながら、さらには、現実社会でもビジネスで得た利益を通貨交換によって得られるという、「セカンドライフ」というオンラインゲームがあることは知っていたが、すでに1兆円産業にまで成長しているようである。

 仮想社会とか、仮想経済と言うと、危ういイメージが強いが、我々が生きている現実の社会がどこまで仮想なのかと言えば、毎日見ているテレビ番組やインターネットの多くが、現実とは異なる仮想な部分があり、また、経済社会も国家が無くても価値の裏付けが認められている金貨だけでは経済が成り立たず、国家が価値を認めることで成り立つ仮想的な通貨である紙幣が無ければ経済も貿易も成り立たないことからも、現代社会の中で仮想的な部分が占める割合は情報社会以前から大きかったように思う。

 ただ、社会も経済も全てが仮想であるという、「セカンドライフ」のようなネットゲームが果たしてどこまで意味を持つのかについては、疑問に思う部分も少なくない。

 セカンドライフで唯一価値を認め得るのは、情報だけである。情報以外は何の裏付けも無い三次元CGで作られた構築物だけであり、使われている貨幣にしても、国家や政府が価値を認めているわけではなく、セカンドライフを経営している企業が作り出したものであって、どこまで信用があるかは未知数である。

 現実社会では実現出来ない夢を、こういう仮想社会で実現出来るというのは市場価値が大きいことはわかる。しかし、セカンドライフを見る限り、オンラインゲームに経済的なギャンブル性を導入しただけの印象を受けるのは、私だけではないだろうと思う。

 仮想社会上で味が無いビールやドリンクを飲んで、コスプレしている素性のわからない相手と話をするのが面白い人もいるかもしれないが、私は願い下げである。

 こういう仮想社会で夢を実現するという話は、西欧のファンタジー小説で出て来る魔法世界と同じであり、何も無い大草原に一夜のうちに国家が生まれ、豪華な生活に酔いしれていたら、あくる日になると全てが消えうせて何も残っていなかったというお話が有名だが、この魔法世界をコンピュータを使ってインターネット上に実現したのに他ならない。

 ただ、どんなに仮想であっても、現実との接点が無ければ意味を持たないと考えるのは誰でも同じである。単に夢の世界の通貨が現実の通貨と交換出来るようになったと言っても、それだけでは意味があるとは思えないのである。

 もっとも、企業から見ればセカンドライフはお金がかからないテーマパークである。商品広告や商品のCGをユーザーに体験してもらう上では貴重な場である。そういう意味では、企業価値があるとは認められるが、果たしてユーザー側の関心を呼ぶかは何とも言えないように思うのである。

 ユーザー側から見れば、セカンドライフは体力を必要としない遊園地という価値しかないようにも思える。言わば、高齢者向けのオンラインゲームとでも呼ぶべきものだろう。

 企業側から見れば、インターネットは今後ますます擬人化し、三次元世界を体験するオンラインゲーム的な世界に変わっていくものだという認識があるのだろう。確かに、コンピュータ技術の進歩で二次元から三次元へと変わっていくのは当然かもしれないが、擬人化する必要があるとは思わないのである。

 理由はいくつかあるが、インターネットをゲームの延長線上で考える必要があるとは思わないことが第一にある。インターネットは情報交換の場であり、それ以上でもそれ以下でもない。ゲームも出来るだろうが、全てをゲームと同じにしなければならない理由はないと思うわけである。

 おそらく、本来のインターネットは今後もホームページやブログのような活字を主軸に置いた情報交換が主流であり、三次元化や映像化が進むのは間違いないだろうが、オンラインゲームのようにはならないだろうと思う。

 外国に比べて日本ではオンラインゲームが不人気な理由は、おそらく、自分の世界に部外者が入り込んでトラブルになるのを嫌う傾向が強い為だと思うが、インターネットでの訴訟事件が多いだけに、セカンドライフのような仮想社会を作っても同じ問題が噴出して、ゴタゴタが絶えないのではないかと思うわけである。

 現実の社会でも殺人や放火、窃盗などの事件が続発しているだけに、セカンドライフでもさまざまな犯罪を引き起こす人間が出て来るのは間違いないだろうし、それは金銭問題に集中するのも予想されることである。

 バーチャル経済は確かに今後の日本にとって重要な課題だが、セカンドライフがその答えかと言えば、必ずしもそうではないと考えたい。



                                   <NOBUAKI>