<同時多発テロを再考する(4)>

同時多発テロを再考する(4)


 2001年9月11日に起こった米国同時多発テロから5年目に入り、「謀略」、「自作自演」など、さまざまな説が息を吹き返している。ここでは、こうした論争よりも、同時多発テロに至った原因を作ったのは何だったのかを考えてみよう。

 世界貿易センタービルが爆破されたのは、同時多発テロが初めてではない。これよりもずっと以前、90年代に一度、アルカイダの自爆テロによってTNT火薬にして500キロを超えると推定される爆発物が貿易センタービルに仕掛けられ、爆破される事件が起こっている。この時は火災による被害だけで、多くの犠牲者は出なかったが、テレビによるニュース報道で重要な情報が建築学の専門家によって世界中に流れて、それがアルカイダの耳にも入り、同時多発テロ計画の下地になった印象を受けるのである。

 アルカイダは最初の作戦では、貿易センタービルは下から爆破すれば倒壊するとしか考えていなかった。しかし、事件後の報道で、大量の爆発物を仕掛けて爆破しても、貿易センタービルの構造上、容易なことでは倒壊しないことを建築学の専門家は指摘していたのである。

 そして、下からではなく、上から爆破すれば、パンケーキ崩壊と呼ばれる破壊が起こってビルが倒壊することを理論的に解説し、それがテレビによって世界中に報道されたわけである。

 もちろん、アルカイダも事件後に、これを知ったのは間違いないだろうし、こうした報道がおこなわれたことが、結果的に航空機を使った同時多発テロに結び付いたからと言って、マスコミや建築学の専門家を非難する理由にはならない。

 むしろ、パンケーキ崩壊という現象があることを知った米国政府が、その後から対策を十分に取っていれば、事件は防げたかもしれないのである。同時多発テロ後に強化されたテロ対策のうちの一つだけでも事前におこなわれていれば、同時多発テロは失敗に終わっていた可能性が大きいからである。

 なぜ、同時多発テロは成功したのだろうか。発想は比較的単純なものである。下から爆破しても駄目ならば、上から飛行機を衝突させてパンケーキ崩壊を起こして潰そうというものである。

 しかし、パンケーキ崩壊が起こるには、航空機が衝突する高度が非常に重要であり、貿易センタービルの上層階の総重量で、下層階が航空機の衝突した後に起こった火災によって脆くなっているビルの構造材を重みで潰していくように、精密な計算をおこなう必要がある。

 しかも、パンケーキ崩壊が始まった後、それが連鎖崩壊を起こして加速度的に進行していくようにしなければならず、途中で破壊が止まってしまうことがないように計算されていなければならない。

 それは、中型旅客機が衝突した貿易センタービルの高さの5分の4から、4分の3ぐらいの高度であったわけで、これよりも下でも上でも完全な崩壊は無かったかもしれなかったわけである。

 おそらくは、コンピュータを使って何度もシミュレーションを重ねて計画を練ったと言われているが、パンケーキ崩壊が貿易センタービルの地下街まで破壊していることから、完成度の高い作戦だったことがうかがえる。

 この航空機を使ってパンケーキ崩壊を起こす作戦が有効なことが全世界に知られた結果、同じ事件が世界中で起こることを懸念した人々が動揺しているわけであり、それが原因でテルミット弾が使われたとか、ビルの内部に爆弾が仕掛けられていたとか、常識では考えにくい指摘をする人々が出て来るのだろうと思う。

 高層ビルの内部に爆弾を仕掛けて爆破した事件は過去にもいくつかあるが、どれもビルの倒壊にまで結び付いた例はほとんどない。大きな崩壊が起こった場合でも、ビルの半分が崩れ落ちたというものぐらいである。理由は、ビルの重量を支えている構造材の破壊を起こすには大量の爆発物を使わなければならないし、構造材に爆弾を直接取り付けなければならないからである。

 また、テルミット弾で高層ビルが破壊出来るのだったら、最初からテルミット弾を仕掛けて爆破する事件が相次いでも良さそうだが、そういう事件は起こっていないのである。おそらく、効果が期待出来ないからだろうと思う。

 さらには、論外とも言うべき、小型核爆弾説まで出す人もいるようだが、そんなものが使われていたら、ニューヨークそのものが爆風で吹き飛んでいただろう。

 こういう説が出て来るのは、謀略説や自作自演説を書いた本がベストセラーになり、こうした本を書いて億万長者になろうとする人が学者の中にもいるということだろうと思う。

 確かに、事実が隠されているのは間違いないだろうが、事故調査委員会が航空燃料がビルの内部で燃えた時に、何が起こるのかを科学的に解明して発表するまでは、こうした水掛け論が終わることはないだろうと思う。



                                   <NOBUAKI>