<心理的ストレスへの損害賠償>

心理的ストレスへの損害賠償


 被害者に心理的ストレスを与える犯罪が急増している。これはインターネットだけではなく、電話による犯罪が多いが、こうした犯罪被害者に対しての損害賠償はほとんど考慮されていないのが裁判制度の現状である。米国の場合は、こうしたストレスを与える犯罪に対しては最高裁判決で多額の補償が認められるケースがあるが、日本では全くないのは、なぜなのだろうか。

 インターネットを使っていると、迷惑メールがときどき送られて来るのは、日常的な問題である。迷惑メールには非常に不愉快な内容が意図的に書かれていることが多く、タイトルを見ただけで、一日中を不愉快な気持ちで過ごさなければならないほど嫌なものである。

 これが電話による嫌がらせとなると、さらに深刻なものになる。メールならば削除すれば良いし、止めることも出来るが、電話の場合は、誰のものかがわからないので、不愉快な内容を何度も聞かされて嫌な思いをしなければならない場合も出て来る。

 こうした情報通信を使った精神的ストレス被害はどのくらいの心理的負担を強いているかは、何も調べられていない。オレオレ詐欺やサラ金の取立てなどで自殺に追いやられている人が多くいることを考えると、かなりのハイストレスが脳に加えられていて、うつ病などの精神疾患を引き起こしていることは間違いないが、それを犯罪として認め、多額の補償が支払われた例はほとんどなく、大部分は僅かな損害賠償で終わっているケースが多いように思う。

 ところが、これは日本国内の話であって、欧米では大きく対応が違う。ずいぶん昔の話だが、英国で食パンの中にネズミの死体がスライスされて混入していた事件があり、それを誤って食べようとして卒倒した主婦が製パン会社に当時でも破格の高額賠償を請求して、それが裁判で認められたケースが過去にある。

 米国でも、最近、ある大手企業の秘書が精神的ストレスを理由に高額賠償を請求し、それが裁判で認められて和解している。

 日本では、ほとんど問題にされず、裁判でもせいぜい僅かな慰謝料ぐらいで済んでしまうような事件が外国ではきちんと処理されて高額の賠償金が支払われているのである。

 この違いは何なのだろうか。日本では眼に見えないものは被害として取り上げない風潮が強く、心理的な被害が裁判で賠償金という形で保障されることは少ないのが実情である。

 心理的なストレスを被害として認めない裁判が多い為に、逆に心理的なストレスを被害者に与える犯罪が野放しになっており、こうした犯罪が急増する結果になっている。これは情報犯罪や精神的被害に全く対応出来ていない旧態依然とした裁判制度の欠陥が原因なのだが、これを変える動きは政府内には全く無いと言って良い。

 現在、日本でうつ病などの精神的ストレス障害が急増しているのは、こうした裁判制度の欠陥が是正されず、本来ならば、訴追出来るはずの被害者が訴追出来ずに病気になっているのが原因だろうと思う。

 こうした精神的ストレスを引き起こす情報戦を武器にした事件であまりにも有名なのは「グリコ・森永事件」であるが、この事件の犯人は、菓子メーカーが大きな打撃を受ける情報をマスコミを利用して流し、消費者に精神的ストレスを与えて菓子を買えないようにし、追い詰められた菓子メーカーから多額の現金を奪おうとしたものであったが、結局は失敗し、犯人も逮捕されずに事件は終わっている。

 現在でも、マスコミを利用して情報を流し、多くの民衆に精神的ストレスを与える犯罪は決して少なくない。最近、問題になっているテロ事件などは、その最たるものだろう。

 すでに、情報が犯罪の武器となり、精神的ストレスという被害を受ける人が急増しているにも関わらず、法制度を変えようとしないのが現状であり、情報社会が技術的に急成長して、新しい情報犯罪が次から次へと現れているのに全く対応出来ていない。

 情報を使って致命的な精神的被害を相手に与えるのは立派な犯罪であり、それがほとんど認められないのは、裁判制度の不備であると思う。



                                   <NOBUAKI>