<テポドン2号の軍事的意図>

テポドン2号の軍事的意図


 騒げば騒ぐほど相手の術中に填まると言われるが、北朝鮮のミサイル騒ぎも、その傾向が強い。本来ならば、短いニュースを流すだけで十分なのに、完全に相手の情報戦に乗せられているように思う。なぜ、こうしたことが起こるのだろうか。

 鶏と卵の関係と言うジレンマがあるが、北朝鮮のミサイル問題にも同じような関係がある。北朝鮮を経済的に追い詰めれば追い詰めるほど、兵器輸出以外に外貨を稼ぐ手段を失ってミサイル開発に専念するようになり、ミサイルの発射実験が増えるというジレンマである。

 また、北朝鮮がミサイルを発射すると、すぐに大騒ぎするマスコミの存在がある。騒げば騒ぐほど国民に動揺や不安が走り、世論が左右されやすくなる。本来ならば、政治家が外交交渉でおこなうべきことが、何やらマスコミによって国民を挙げての運動に結び付けられているようで、どうも解せない感じがする。

 軍事技術としては明らかに古く、命中精度も低く、脅威と呼ぶには物足りないミサイルが、誇張されて伝えられているところに大きな問題があるように思う。

 射程6000kmの戦略級地対地ミサイルと言えば、すでに米国、ロシア、中国、英国、フランス、イスラエルなど、多くの核保有国が持っているありふれたミサイルである。もちろん、これに核弾頭を搭載出来れば、一発で大都市が吹き飛んでしまうほどの破壊力を持つのは事実である。

 しかし、核を搭載するには、核弾頭の小型化が不可欠であり、それにはかなり高度な核技術が必要とされる。また、核弾頭の開発と生産には莫大な資金が必要である。果たして、そんな大事業が出来るほどの経済力が北朝鮮にあるのだろうか。

 代理戦争という言葉があるが、どうも資金を出して射程距離が大きいミサイルを欲しがっている国々があって、その要求に答える為にミサイル開発に精を出しているのが実態であり、このミサイル商取引を封じない限りは、ミサイル問題の解決はありえないのではないだろうか。

 また、事態がこれだけ複雑化した背景には、テロ対策の名の下に、むやみに中東の国々を攻撃して戦火を拡大した超大国米国の存在がある。核兵器開発を中止し、ミサイル廃棄にも応じていたイラクを無理矢理こじつけた濡れ衣で宣戦布告し、国土を戦場に変えた責任は大きいだろう。

 イラク戦争が起こってからというもの、どの国も核軍縮や核拡散防止という美辞麗句を信じなくなった。核兵器を保有しなければ、いつかは米国に攻撃されて国家体制が失われるという恐怖感に苛まされて、持つ必要が無い核兵器を保有する道を進めている国が数多く出ている。

 そうした国が受注先としてたどり着くのが北朝鮮なのである。パキスタンが北朝鮮から購入した戦術ミサイルで核兵器の保有に成功した結果、どの国も北朝鮮からミサイルを買えば、米国の脅威から逃れられると真剣に考えるようになっている。

 そうした国々の心の隙につけ込んで新型ミサイルの開発に専念しているのが、この国の実態なわけである。誰の責任かを問う以前に、こうした循環サイクルを作り出した責任がまず問われるのではないだろうか。

 今では、核兵器を保有するのが脅威なのではなくて、精密誘導兵器で武装した米国が脅威なのであり、それから国を軍事的に守るには核兵器保有しかないという焦りが広がって、現在のような状況に陥ったのではないだろうか。

 核兵器や射程の長いミサイルを保有したところで、国家体制の保全には役立たないことは、冷戦の崩壊を見ても明らかなのであるが、中東の国々にはそれが理解されていないわけであり、ただ、核兵器や核ミサイルを持っていれば、米国は攻めて来ないと信じ込んでいる一面があるように思う。

 北朝鮮がテポドン2号の打ち上げを計画したのも、それが理由であり、日本から見れば不安や脅威を煽る行為であっても、こうした核兵器の保有を意図している国々から見れば、新兵器の実験展示会を見ているような感じなのではないだろうか。

 繰返すが、マスコミが騒げば騒ぐほど、こうした核ミサイルの保有を予定している国々から見れば、ミサイルの性能や威力が誇張されて伝えられるだけであり、ミサイル開発を封じる役には立たないのではないかと思う。

 わざわざ北朝鮮がマスコミが騒ぐように挑発的なミサイル実験をおこなうのは、こうした軍事的背景と政治的意図があるのではないだろうか。



                                   <NOBUAKI>