<出生率低下の原因は何か>

出生率低下の原因は何か


 ローマ帝国時代、貴族や自由市民達の贅沢の為に財政は悪化し、間接税は肥大し、出生率は低下して、帝国の破綻へと結び付いたと言われる。現在もまた、同じような文明病が始まっているが、その原因は何だろうか。

 我々の社会はローマ帝国がモデルになっていると言われる。ローマ帝国で起こったことは現在の社会でも起こりうるとも言われる。現在、問題になっている出生率の低下もまたローマ時代にも起こった社会問題であった。なぜ、出生率は低下するのだろうか。

 現在の日本の出生率の低下原因をあげるならば、いくつでも理由があるだろう。まず、雇用が不安定になり、失業率の増加と賃金の低下で子供を多く養う経済力を持たない若い層が増えているし、間接税の増加は、それに追い討ちをかけている。また、仕事が忙しく、子育てに時間を割く余裕が無い若い主婦層も多く、これが平均出産年齢の高齢化に繋がっている。

 さらに、子育てよりもペットの飼育に専念する人達も増えている。こういう社会的傾向が総合して出生率の低下へと繋がっているのではないだろうか。

 それでは、子供はなぜ必要とされるのだろうか。もちろん、遺伝的後継者としての必要性が大きいわけだが、その他にも労働力や経済力などの理由が続く。愛情を注ぐ対象としてだけでなく、社会的理由も大きいわけである。

 だが、子供が減った最大の理由は、子供の養育費が大きくなり過ぎたことではないだろうか。また、子育て以外に消費することが多くなった為に、子供を多く育てる資金的余裕が無くなっていることも大きいのではないかと思う。

 また、賃金が下がって、経済的に貧困な層が増えているにも関わらず、その生活スタイルは以前と同じままである為に、子育てに使う余裕が無いということだと思われる。

 ニュースで放送される第三世界の人達を見る時、我々は彼らの貧しい生活と子供の数の多さをアンバランスに感じるが、実際は子供がほとんどいないのに過度に生活スタイルの維持に消費している我々の方が、ある意味では貧しいと言えるわけである。

 子供を育てる為だけに消費するのであれば、それほどお金はかからないだろう。贅沢を諦め、高価なオモチャを与えず、高学歴教育を捨て、ただ、数だけ子供を増やすのであれば、出生率を上げることは難しくはない。

 しかし、そういう判断をする人達は少ないわけである。自分よりも貧しい教育しか受けられない子供を育てることは、誰も望まないからである。だから、子供の数を減らす、もしくは、最初から作ろうとしない人達が増えてしまうわけである。これはローマ帝国が衰退期に入った頃も同じだったと思われる。

 つまり、現在の生活スタイルを維持し、子供も同じか、それ以上の生活スタイルをさせてやりたいという親心が出生率の低下の真の原因としてあるのではないかと思うわけである。

 昔は「貧乏子無し。」という冷酷なことわざがあった。貧しさゆえに子供を育てることも出来ないという意味である。今では、これは経済的な貧しさよりも、教育の貧しさを恐れるあまり、子供を作ろうとしないようになって来ているのではないだろうか。

 言わば、学歴に国が潰される社会が始まっているわけである。学歴社会が必要とされる真の理由は何かを問う場合に、答えとして考えられるのは、官僚の地位保全ではないかと思う。

 つまり、学歴社会が無くなると、官僚達は社会的地位の継続が不可能になるというわけである。その為、官僚よりも多くの知識を持ち、官僚よりも優れた判断能力を持つ人物がいても、学歴が悪ければ、評価されない社会が成立している。

 そして、こういう社会を作った結果、学歴が高くても質が低い官僚が増えたせいで、しばしば政治的判断を誤り、失敗を繰り返す結果になっているように思う。

 現在の情報社会では、知識を求めたくても本が買えないので得られなかった話は過去のものになりつつある。インターネットで時間をかけて検索すれば、必要な知識の多くが得られるようになっているからである。高度に専門的な知識を除いて、大部分の情報はインターネットで得ることが出来る。インターネットは大学や図書館に相当する情報量を持つようになって来ているし、これからも、その情報量は増え続けるだろう。

 それにも関わらず、今なお、学歴社会は生き残っているわけである。そして、学歴社会を継続し、発展させる為に莫大な教育費が必要とされ、それが少子化を促進しているわけである。

 国の経済が思わしく無くなって来ているにも関わらず、こうした教育費の肥大を続けていたら、どうなるのであろうか。必要なのは、無駄な浪費を増やすことしか考えない官僚体制の継続ではなく、誰もが努力すれば知識を得て評価される社会の実現だろう。

 残念ながら、官僚主義の構築によって、一度決まったことは絶対に変えない社会が実現してしまっている。これからも、学歴社会は継続され、出生率の低下は続くだろう。学歴問題だけではなく、さまざまな部分で優れた技術が普及しているにも関わらず、それが個人と国家の間で社会的に生かされない社会が続いている。

 現在、問題になっている英語教育にしても同じである。パソコンが普及し始めた頃、英語が出来ないとパソコンが使えないというデマが流れたことがある。実際には、英語など出来なくてもパソコンは使えるし、プログラムも書けることがわかって、そういう作り話は自然消滅したが、同じような虚構が現在も社会のあちこちで生き残っていて、多くの弊害を生んでおり、それが教育を偏らせ、混乱させているのである。

 出生率の低下はローマ帝国以来、繰り返されている問題が解決されないからであり、決して、一つの政策を出せば全てが解決するというものではない。これから、間接税の税率引き上げで重税感が増し、それがさらに出生率の低下に拍車をかけるであろう。個人の豊かな生活を取るか、子供を取るかの二者択一が今後の大きな社会問題になって来ると思う。



                                   <NOBUAKI>