<現実は小説よりも奇なり>

現実は小説よりも奇なり


 映画や小説は現実とは正反対の話が多いので、これらの話を全部逆にして考えると現実に近づくとか、現実が見えるとか言われるが、では、現実とは何なのかと言えば、現実の方が実は人間が考える以上に奇妙なのである。

 たとえば、我々は地球上で飛行機が飛んだことがない場所はほとんどないことを知っている。人工衛星が見えない地域もほとんどないことも知っている。地球上に住んでいれば、誰でも一度ぐらいは飛行機が空を飛んでいるのを見たり、夜空を光る点がゆっくりと動いているのを目撃して、それが人工衛星や宇宙ステーションだということが、後になってわかるという経験をしたことがあるはずである。

 宇宙開発をしている文明が惑星上に一つでも存在していれば、惑星全体にその影響が及び、さらには、他の惑星にまで影響が及ぶことは、我々がテレビで見て知っていることであり、それを当たり前として考えている。今では、火星や金星、土星の周囲にも探査機が周回しており、火星の大地から夜空を見上げれば、小さな点のような探査機が上空を光りながら通過して行く様子が見えるのである。

 これから何百年という時間が過ぎれば、他の恒星の周囲にある惑星や衛星にも探査機が飛ばされて、写真や映像が地球に送られて来る日がやって来るだろうし、着陸船が地上に降りて撮影した写真も送られて来るだろう。そういうことが技術的に可能なことを我々は知っているのである。

 実際、電波を他の星へ送るプロジェクトもおこなわれているし、すでに数十光年以内の恒星には地球から送られた電波が届いているはずである。高度な文明が一つあるだけで、非常に遠くの星までその影響を受けるようになるわけである。

 ところが、ここで発想を逆にして考えて見ると、もし、過去に高度な文明が他の星にあって、地球と同じように宇宙開発をおこない、電波を送ったり、探査機を飛ばしたりしていたことがあったとしたら、地球にもそうした探査機が来ていたかもしれないという考えが出て来る。確かに映画の世界では、こうした話もある。しかし、現実には、こうした文明が存在した証拠は何一つ見つかっていないし、地球が他の文明から干渉を受けた物質的な証拠も一つも見つかっていない。他の星から送られた電波も一つも受信されていない。事実上、高度な文明が過去に存在して地球に影響を及ぼした可能性は否定されているのが現実である。

 では、なぜ、そうなのだろうか。銀河系に地球以外に文明が無い理由を説明しようとすると、最後にぶつかるのは、地球に知的生物や文明があるのがおかしいという結論になるそうである。なぜならば、銀河系の観測が進めば進むほど、太陽に似ていると思っていた恒星が実は太陽とは大きく違っていたり、地球とは似ても似つかない惑星ばかりが見つかって、地球のような惑星はどこを探しても見つからないとか、そういうことばかりが続いているからである。

 もし、仮に、地球のような惑星が一つでも銀河系にあって、そこに宇宙開発をしている文明があったとしたら、見つからない理由を考える方が難しいと言われる。地球を数十光年彼方の星から見つけるのは簡単である。電波観測でも地球からの電波が観測出来るし、地球上の都市から放出される熱が夜間に赤外線という形で宇宙に放出されているので、地球は夜側の赤外線放射が異常に大きい惑星として遠くからでも観測することが出来る。地球からの電波はデジタル通信やテレビ電波のように特徴のある信号波を伴っているので、自然界の電波との識別が容易である。他にも色々とあるが、太陽の近くに文明がある惑星があることを見分けるのは、かなり遠方からでも可能であり、逆に言えば、地球の近くには、そういう惑星は一つも見つかっていないということである。

 では、遠くの星に文明があれば見つからないのではないかという話になるが、これも文明が高度であるほど特徴のある信号が目立つようになるので、発見は容易になると言われる。何万光年も離れた星であっても、デジタル信号のような自然界には無い電波信号が受信されれば、それは文明以外に説明する方法がないからである。これは銀河系内の星でなくて、他の銀河の星であっても、非常に強力な信号を送っていて、しかも自然界にはない信号成分を含んでいれば受信して識別出来ると言われている。

 ところが、これも一つも発見されていないのである。だいたい発見出来ないこと自体がおかしいとも言われる。宇宙には無数の星があるのだから、宇宙全体を観測すれば、確率的に1つや2つは見つかるのが当たり前だからである。砂漠の真ん中にいても、アンテナをあちこちに向けていれば、軍用や民間で使っている電波の1つや2つはすぐに受信出来ることを考えると、あまりにもおかしい。

 また、電波に頼らなくても、探査機を遠くの星に送っている文明が一つでもあれば、地球が過去に発見されていることも考えられるはずだが、それならば、地球に向けて電波やレーザーなどの通信信号が他の星から集中して送られて来ていても不思議ではないはずで、そういったものも一つも発見されていないのは、そういう文明が無いことを示す証拠にしかならない。

 要するに、どこにも何もいないのが答えということになってしまって、地球に人類や文明がある方がむしろおかしいという話になるわけである。そして、それならば、どうして地球に人類や文明があるのかというと、これが確率的に珍しい天文学上の事件ばかりが続発した結果だと説明されている。

 ただ、こういう説明の仕方には疑問を持つ必要があるのも事実である。昔、西洋で科学が宗教によって弾圧されていた時代に、ガリレオが地球が太陽のまわりを回っており、これと同じようなことは木星や土星でも起こっていて、おそらくは、こうしたことは宇宙のどこでも起こっていることであって、地球が特別な星ではなく、ありふれた天体に過ぎないのだということを説明しようとして地動説を唱え、宗教弾圧を受けて幽閉された歴史があるからである。

 地球がどこにでもあるありふれた星であるならば、生命や文明もどこにでもあるありふれたものであるはずである。それがどこにも見つからないとしたら、誰かが事実を隠していると考えることも出来るだろう。過去にパルサーと呼ばれる電波星が発見された時にも、天文学者が文明のある星と勘違いして、極秘扱いにして隠していた実話がある。人工衛星の電波信号を地球外文明からの電波だと誤認して事実を公開しようとしたら、政府や軍から弾圧された話もある。

 地球外文明が実在するということが明らかになると、東洋文明が西洋文明の前に衰退を余儀なくされたように、地球外文明からの高度な技術情報に駆逐されて文明が滅亡すると警告した科学者がいるのも事実である。これは、パソコンが普及した結果、情報革命で世界が大きく変わった現実を見てもわかることだろう。パソコンのようにどこにでも浸透する技術が地球外文明からの電波信号の解明によって明らかになったら、我々の文明は、それこそ、あっという間に崩壊するかもしれないのである。

 だから、電波観測によって地球外文明からの信号が観測されても、公開されずに隠し続けられる可能性は否定出来ないだろう。ただ、現在のような情報社会では隠し続けることは難しいと思う。どこかで漏れて噂が広がる可能性が大きいし、地球外文明からの信号が見つかっても、それを解読するのに何百年かかるかわからないわけだし、すぐに技術革命が起こるわけではないから、それほど危険が大きくはないのである。

 ただし、考えて欲しいのは、地球外文明があるか、ないかではない。仮に、本当に地球外文明が発見されたと信じてみて欲しい。すぐにわかると思うが、宇宙が非常に狭く感じられて、我々が宇宙の一部であるという確信を強く持つようになるはずである。地球上で起こっていることが世界の一部の出来事でしかないように感じ、世界観が大きく変わるはずである。

 もし、地球外文明を隠している者がいるとすれば、こうした考えを人類全体が持つのを恐れているからではないだろうか。



                                   <NOBUAKI>