<当たり前がわからない話>

当たり前がわからない話


 我々がいる宇宙は、繰り返しが多い世界である。例えば、類似した銀河はたくさんあるし、類似した恒星もたくさんある。当然、類似した惑星や衛星も数多くあるはずである。こうした論理で推測していくと、宇宙には、地球のような星がたくさんあって、当然、我々のような知的生物も非常に多く存在しているという考え方になる。

 もし、そうだとしたら、他の星からの電波通信が地球に来ているのではないかというので、SETIなどの電波観測がおこなわれているのだが、各国が様々なSETIを何十年にも渡っておこなって来たのに発見された例は無いのである。

 地球のような惑星がごくありふれた星であるならば、こういうことはありえないことである。しかし、実際には逆の結果になっている。これをFACT-A問題というのだそうだが、未だに未解明の現実である。

 この問題は立場を変えてみると、地球がなぜあるのかという問題にもなる。仮に銀河系に知的生物や文明が一つもないのだとしてみよう。すると、なぜ、地球にだけ知的生物や文明があるのかという矛盾に直面する。宇宙に知的生物がいないのならば、地球に知的生物がいる方がおかしいということになる。繰り返しが多い宇宙で、地球だけが特別というのも変である。

 そこで、太陽がどうやって生まれたのかを調べてみると、これが奇奇怪怪の異常現象の連続で生まれた星であることがわかって来るのである。こういう星があること自体が本来はおかしいような星なのである。これがわかると、他の星に文明が見つからない謎が解けて来るとも言える。同時になぜ太陽という星があるのかという大問題が出て来るわけである。今回はこれを考えてみよう。

 銀河系は大小さまざまな銀河が衝突しながら大きくなった銀河であり、大きさから言えば、比較的大きな銀河に属するものである。銀河が衝突するとスターバーストと呼ばれる現象が起こり、比較的大きな恒星が集団で誕生する。これらの恒星は短命であり、比較的短期間に超新星爆発を起こして一生を終える。そして、その後にはブラックホールや中性子星のような高密度星が残ると考えられている。

 銀河系も初期には、こうした現象が頻発して、多くの恒星が生まれていた。それらの恒星はどれも重元素の比率が小さく、水素やヘリウムを主成分とする恒星であり、第二種族と呼ばれている星である。恒星の密集度は銀河系の中心に近いほど大きくなるので、当然、銀河中心に近い領域では、恒星がひしめいており、恒星が多いということは超新星爆発も多くなるので、こうした領域では比較的頻繁に超新星爆発が起こり、重元素が多く作られて分子雲に含まれるようになり、新しく生まれる星の原料に加わることが多くなる。こうした重元素の比率が多い星を第一種族の恒星と呼ぶ。

 それに対して、銀河系周辺部では恒星の密度が小さいので、超新星爆発も起こりにくくなり、重元素を多く含んだ分子雲も少なくなる。その為、同じ第一種族の恒星が生まれても、重元素の比率はあまり多くならないことになる。

 では、太陽はどういう星なのかというと、実は重元素の比率が一般の恒星に比べて40%も多く、こういう星は銀河系中心付近には多くあるのだが、周辺部では極端に少ないことがわかっている星なのである。なぜ、重元素の比率がこんなに多いのかと言えば、太陽が生まれる以前にほぼ同じ領域で超新星爆発が2万年の間隔を置いて2回連続して起った後で出来た分子雲から太陽が生まれたせいだと考えられている。

 これがわかった頃、太陽は銀河系周辺部にある球状星団の近くで生まれた星ではないかと考えられていた時期があった。しかし、球状星団というのは、実は他の銀河が銀河系に衝突してガスや塵を奪われ、周辺の恒星も銀河系に吸収されて、中心付近の恒星だけが残った銀河の残骸である。もし、これが真実だとしたら、太陽は別の銀河で生まれた星ということになる。

 そこで、太陽の軌道に近い球状星団を探したのだが、いくつか見つかったものの、どれも軌道が完全には一致せず、結局、太陽が球状星団の近くで生まれたという考えは否定されている。しかし、そうなると、なぜ、太陽は重元素の比率が多いのか、銀河周辺部で重元素の比率が大きい分子雲があったのならば、同じ分子雲から生まれた恒星がたくさんあって良いはずであるが、これがどういうわけか、非常に少ないのである。

 太陽が生まれた場所が銀河周辺部から変わっていないのだとしたら、太陽が生まれる少し前は、超新星爆発が頻繁に起っており、太陽が生まれた後も、紫外線星のような特殊な恒星が近くにあるほど、巨星や超巨星が多い領域であったと考えなければ説明が出来ないのだが、太陽の軌道には、こういう領域はほとんどないのである。

 太陽は他にも謎がある。太陽と同じクラスの恒星の観測でわかったことだが、太陽のような恒星は活動が激しい星が非常に多く、太陽のように活動が穏やかな星は極めて珍しいということである。また、太陽は活動が安定しているが、太陽のような恒星の多くは活動が不安定な星がほとんどで、仮に地球のような惑星が周囲を公転していたとしても、活動が大きく変化する為に、海が沸騰したり、逆に凍りついたりといった現象が頻繁に起っていて、生命が住めるような環境ではないことがわかって来たのである。

 さらに、これにとどめを刺すようなことがわかっている。太陽の軌道は共円軌道という特殊な軌道であり、銀河系の恒星の多くは、こうした軌道を公転していないのだが、太陽の場合は共円軌道を公転している為に、銀河の腕に近づくことが1億年に一度しか起らない。そして、腕に近づくと重力の乱れで彗星が太陽系内に大量に降り注ぐ現象が起り、生命の絶滅が起こると考えられている。これが他の恒星では、共円軌道ではない為、太陽よりも頻繁に腕に近づき、生命の絶滅が頻繁に起こっていて、知的生命が進化出来る時間がないと考えられている。

 これだけでも、太陽の特殊性がわかるが、他にもおかしなことが多いのである。例えば、地球には月があるが、月が出来る確率はどのくらいかと言うと、5分の1くらいだと言われている。これは比較的大きな数字である。では、月が現在の軌道を公転している確率はどのくらいかと言うと、これはそれほど大きな数字ではないのである。

 ご存知のように、月は地球に火星ぐらいの惑星が衝突して生まれた天体だと考えられている。惑星と惑星が衝突する時は、互いに重力で引き合うので、軌道が近づくわけだが衝突する時に真正面からぶつかるとは限らない。実際、月が出来る時は、火星ぐらいの大きさの惑星は地球の赤道よりも少しだけ緯度が高い位置に、しかも、地球の末端に近い場所に衝突したと考えられている。

 もし、これが、同じ地球の末端であっても、極地域や高緯度地域に衝突していたら、月の公転軌道は大きく傾いて、地球は横倒しの状態で太陽の周りを公転していただろうと考えられる。こういうことは、それほど珍しいことではなく、天王星や冥王星などは、実際、こうした状態で自転しているし、たとえ、横倒しにならなくても、地軸が大きく傾いた状態で自転していたら、生命の生存に適さないほど環境の変化が激しい星になっていただろうし、逆に地軸の傾きがほとんどない星になっていたら、今度は高緯度地域に大量の氷河が残って、氷河時代から抜け出せない星になっていた可能性もある。

 結局、現在のような23.4度という地軸の傾き以外に、ちょうど良い数字はないのだが、これも地球と火星だけがこれとほぼ同じ傾きなのであって、他の惑星は全て違うのである。

 他にも、惑星の軌道が全て円に近い軌道を公転しているのは太陽系ぐらいである。最近、発見された他の恒星を公転している惑星はどれも歪な楕円軌道をまわっており、太陽系の惑星のような軌道をまわっていない。また、これらの惑星はどれも恒星に非常に近い軌道をまわっている。銀河系の恒星の10%が惑星を持っているらしいことがわかって来たにも関わらず、発見される惑星はどれも地球とは似ても似つかない星ばかりである。

 こうなる理由については、惑星系が出来る時に、最大の惑星が木星の質量よりも数倍大きくなると、微惑星が近づくたびに跳ね飛ばしながら軌道が変わって恒星に近づき始め、内側の惑星を飲み込みながら接近して、最後は恒星のすぐ近くを公転するようになる為であることがわかって来ている。また、そうならない場合でも、惑星全体がある大きさを超えて成長すると、互いに重力で軌道が乱れ始めて、歪な楕円軌道に変わるということもわかっている。

 では、太陽系はどうして円に近い軌道をまわっている惑星がほとんどなのかと言えば、これも木星が現在の大きさに達して火星の軌道が楕円軌道に変わり始める頃に太陽の近くで紫外線星と呼ばれる特殊な恒星が輝き始めて、太陽系内のガスや塵を吹き飛ばして、木星がそれ以上大きくなるのを止めた為だと考えられている。

 こうした確率的に低い現象を全てかけあわせると、ほとんどありえない星が太陽系だということになる。これは、太平洋の真ん中に島があって、そこから何千キロも離れた場所まで島が1つも無い海が広がっていれば、その島の下にはホットスポットがあって、そこからマグマが噴出して島が出来たのだと説明されるように、銀河系には太陽系のような特殊な天体が出来る原因があって、それが銀河系の周辺部にあったので太陽系が生まれたと考えないと説明が出来ない。

 それが何なのかは、まだわかっていないようである。銀河系の他の場所では確率が低くても、太陽系がある場所でだけ確率が非常に高くなる何かがあるのかもしれない。それが原因で、太陽系だけ知的生命や文明が始まることになったのかもしれない。

 実際、我々は良く対称性を問題にするが、それはなぜなのだろうか。我々の宇宙は対称性が破れているのに、左右が対称であるシンメトリーを守らないと嫌がる人が多いのはなぜだろうか。太陽系の惑星や衛星を見ると、どういうわけか、同じくらいの大きさの天体が2つずつ近い軌道をまわっている例が多い。地球も金星とほぼ同じ大きさであり、軌道も近い惑星である。太陽は単独の恒星であるが、太陽のすぐ近くにあるケンタウルス座アルファ星と呼ばれる恒星は三重連星であり、太陽よりも若い星であるにも関わらず、最大の恒星はスペクトル型が太陽そっくりのGⅡ型の恒星である。ちょうど天体を鏡に映して2つ描いたような配置になっているのは、なぜなのだろうか。

 本来ならば、太陽の近くにはありふれた星が多いはずである。一番ありふれているのは、赤色矮星であり、赤色矮星が太陽に一番近い場所にあるのが最も自然である。太陽そっくりの星が一番近くにあるというのは、確率的には高くないのである。

 どうも対称性に関しての何かが影響して、太陽系が出来たと考えないと説明出来ないように思うが、そうであるならば、その原因となっているものは太陽系の中か、近くに現在もあるはずである。それは重力に影響を与えるものではないことは確かである。ブラックホールのような高密度星であるならば、重力で惑星の軌道が乱れてしまうのでありえない。近隣の恒星にまで影響していることから考えて、数十光年にまで至る非常に大きな何かだろうと考えられる。

 残念ながら、それが何であるかは全くわかっていない。ただ、そういうものがあるとすれば、太陽系だけで異常な現象が頻繁に繰り返されていることを説明出来ることは事実である。実際、太陽系というのは銀河系内での局部領域の確率異常が原因で生まれたのかもしれないのである。

 我々は悪いことが重なって起こることを経験として知っている。これは物理学的にも説明されている。しかし、なぜ偶然が重なるのだろうか。もしかしたら、こういうことが起こるのは、太陽系の近くだけで、それ以外の宇宙では起こらないのかもしれない。



                                   <NOBUAKI>